1ヶ月ぶりに会った彼女は、ゆっくりとこう言った。
「久しぶり。元気そうね。」
僕の心臓は早鐘を打ち、
その音は現実の音として僕の耳に届いていた。なぜか。それは、1ヶ月間、
本気で彼女のことを忘れていたからだ。
「忘れてたよね、あたしの事。」
彼女はキッと睨むように、僕の心を見透かしたかのように、僕の鼓動を聞いていたかのように言い放った。その通りだった。
カップ麺生活に必死だった僕は彼女のことを忘れていた。
時には美味しいごはんを提供してくれて、時には僕の手を優しく包んでくれて、文句も言わずに献身してくれた、
そんな彼女のことを忘れていた。
「寒かった。寒かったわ。」
すまない、と思った。でも、なにも言えなかった。
黙って彼女を見つめるしかなかった。
「ちょっと!!なに黙ってるのよ!!何か言いなさいよ!!あたしの大根食べないさいよ!!!」
「だ、大根?」
今日初めて発した言葉が
『大根』であるというのも我ながら情けないが、僕はそう、彼女に尋ねた。
すると彼女は更に激昂した。
「あんたがあたしに突っ込んだんでしょ!!大根を!!ダメだって言うのに!あんたが!!1ヶ月前にあたしに突っ込んだのよぉ!!!うわぁぁぁん!!!食べなさいよ!あたしの大根、食べなさいよ!!!」
そうだった。僕がやった事だった。しかも、初めてじゃなかった。思い返せばこれで3回目。
3回目だった。3回も同じ事をしてしまった。オレはバカだ。
クソにたかる銀バエよりもクソだ。ウジ虫野郎だ。
「すまなかった。ごめんよ。食べるよ。さぁ、そこに横になって。今大根を取り出すから。」
「ううん、判ってくれればいいの。さぁ、早く食べて。」
ゆっくりと彼女の中に手を入れ、大根を引き出した。ぷーんと良い香りが漂ってくる。
懐かしい彼女の香り。ああ、君はどうしたってそんな良い香りを放つんだろう。いつもありがとう、
ぬか子ちゃん。
冷蔵庫に入れていたとはいえ1ヶ月付けた大根は凄まじい酸味で、
歯が溶けちゃうんじゃないかと思われ、食べ終わった後は口の中がもの凄くヒリヒリしました。
「さぁ、今度はキュウリを入れてあげるね。」
僕はそういうと、ぬか子の中に手を入れたのです。
ずぶずぶと・・・。
※ちなみに、カレー生活の後に書いた
ぬか子ネタはコチラ。ほぼ同じですw。